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あえのこと

2月9日は能登地方に伝わる伝統の農耕儀礼「あえのこと」の日でした。

古くから私たちの住む能登半島には収穫後の12月と田植えが始まる前の2月に

田の神様に豊作のお礼や祈願を行なってきたのですが、その儀式があえのことです。

12月には田の神様に感謝して家に招き入れ、寒い冬の間を過ごしていただき、

2月には少し寒いのですが田んぼに送り出して1年間再び田んぼを護っていただくというものです。

自然の力に左右される稲作において、ご先祖様たちが田の神様をもてなすことにより

少しでも平和に稲作ができますようにというまさに神頼みだった時代の名残です。

とは言っても現代でも自然の天候による出来不出来は変わらない訳で、

我が家でも真剣に、大真面目に田の神頼みを行いましたのでそのご報告です。

本来であれば、田の神様にお風呂に入っていただき、ご馳走を食べていただいたあと

田んぼに送り出すのですが、それですと田んぼで神様にお願いをする時間がないので

田んぼでの神頼みを先に行いました。

田の神様役はアテの葉という私たちの能登地方では有名なノトヒバの葉を主に使います。

そして、神様に色々とお願いをしました。fbでも当日は多少書きましたが、こちらはフルバージョンです。

 

「田の神様田の神様。今日はb2月9日あえのことの日でございます。

去年はご存知のように親方が突然亡くなってしまい、

親方の耕作していたおおよそ3町歩の田んぼを引き継ぐことになりました。

同時に、中山間直接払いや多面的支払いの事務も引き継ぎ、

そのまま村の皆さんの付託を背に農業委員への立候補も行いました。

私としては、次世代へ引き継いでゆくべく、この地を守る為に全てを背負った訳です。

多少の緊張もありますが、人生をかけて。命をかけて必死に頑張ろうという所存です。

昨年はかなり手厳しい試練をお与え下さり、何度も天を仰ぎながら田んぼと向き合い

雑草の恐怖を身を以て学ばせていただきました。

今年から飼料米も3町歩作る事にしました。

比較的ハードルが低いことと、

売り上げが担保される事で強い農業を推進できると考えられるからです。

自然栽培から飼料米までという本当に幅広い米つくりになりますが

どうか、私をはじめ、仲間たちが怪我もなく一年を過ごせますよう

お護りください。

宜しくおねがいします」

 

と田んぼの中で唱えました。

妻も同行してくれたのですが、振り返ると……

寒いのが苦手な彼女は、軽トラの中に避難して手を振っていました。

それから自宅に戻り、御膳の準備です。

魚があるので我が家のニャンズは興奮気味で、目を離せない状況です。

神様を中心とした御膳が完成しました。

これは昨年先輩農家のKさんが持たせてくれた大根です。

男性だと仰っていました。

神様へのご馳走は

ブリの刺身、イワシの刺身、おはぎ(Kさんの母作)、煮しめ

アカモクの粕汁に良澤本店の水羊羹、すいぜん(米粉で作ったゼリーのようなもの)

幼馴染夫婦が醸した純米にごり酒、れんこ鯛の焼き物、フルーツ(Kさん母が持たせてくれたもの)

です。午前中はKさんのお宅でのあえのことに参加したのですが凄いですよ。本家本元は。

どうですか?

ゴージャスさが違いますね。

まぁ気持ちですからね(笑)

神様に再び本年の抱負を伝えたあと、宴を楽しみ、最後は玄関を少しあけて

田の神様。どうぞ今年も宜しくお願いいたします。と伝えました。

(私たちの地区では神様は玄関をあけると自らそっと家を出て田んぼに向かうと伝えられています)

美しい日本の文化だと私は思っています。

いつの日か、わたしも紋付袴姿で披露できるよう精進したいと思います。

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